っている奴だ。これはかんたんには行かないぞ。いったい何者だろう」
父親のおどろきが、意外に大きいので、こんどは隆夫の方でおどろいてしまった。しかしこのとき隆夫は、父親のおどろきとなった素因《そいん》のすべてを知っているわけではなかった、披は、まだ霊魂界のことについては、ほんのわずかのことしか知らないのであった。
「お父さん。そんなに、あの霊魂は、おそるべき奴ですか。ぼくには、何もかも、さっぱり分らないのです。いったい、霊魂というものが出たり、はいったりするのは、どういう法則に従うものでしょうか。いや、それよりも、ぼくは霊などというものが、ほんとにあることを、こんどはじめて知ったのです。お父さんは、それについて、くわしく知っているようですね」
隆夫のたましいは、次から次へとわきあがる疑問やおどろきを、父親の前にならべたてた。
「霊魂の学問は、なかなか手がこんでいるんだ。つまり複雑なのだ。古い時代にいいだされたでたらめ[#「でたらめ」に傍点]の霊魂説から始まって、最新の霊魂科学に至るまで、実に多数の霊魂説があるのだよ。わしは、お前も知っているとおり、生化学《せいかがく》と物質構造論《ぶ
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