と、この密書には、もっと沢山の言葉が並んでいなければならぬ筈だということだった。
もっと沢山の言葉! それは一体どこに記《しる》されてあるのか。レターペーパーの裏をかえし表をかえしてみたが、それ以上の数の文字は何処にも発見できなかった。――帆村はまるで迷路の中に路《みち》を失ってしまったように感じた。かれはポケットを探ってそこに皺《しわ》くちゃになった一本の莨《たばこ》を発見した。それに火をつけて吸いはじめたが、それは筆紙《ひっし》に尽《つく》されぬほど美味《うま》かった。凍りついていた元気が俄《にわ》かに融《と》けて全身をまわりだした感じだ。彼は煙をプカプカと矢鱈《やたら》にふかし続けていたが、そのうちに椅子から飛びあがると、ハタと膝を打った。
「そうだ。僕は莫迦《ばか》だった。なぜそれにもっと早く気がつかなかったのだろう!」
そう独言《ひとりごと》をいった彼は、襯衣《シャツ》のポケットに手を入れて何物かを探し始めた。
「あった、あった」
彼がやっと取出したものは五、六本の燐寸の棒だった。その中から三本を抜きとって、あとは元通りにポケットの底にしまった。それから彼は館員から茶碗
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