どうも現代に関係のありそうなものが出てこなかった。
「そうだ、これは地名辞典でひかなければ駄目なのじゃないか」
 帆村はそこで、また棚を探しまわって、更に大きな地名大辞典をひっぱりだした。そしてDの部をペラペラと繰《く》りひろげた。
「あ、あったぞ!」と帆村は鬼の首をとったように大声で叫んだ。「デジネフ岬《みさき》というのがある。カムチャッカ半島の東の鼻先のところにある岬の名だ。ベーリング海峡を距《へだ》てて北アメリカのアラスカに対しているそうだ。これに違いない」
 彼はそれからタイムスの世界大地図をまた担《かつ》ぎだして、カムチャッカ半島の部の頁《ページ》を繰った。たしかに有る有る。東に伸びた七面鳥の嘴《くちばし》の尖った先のようなところにある岬の名だ。ベーリング海峡を距てて右の方を見ると、そこに海亀の頭のようなアラスカの突端が鼻を突合したように迫っていた。そして、何気なくそこを見ると彼を狂喜させるようなものが目についた。
「ああ。もう一つの方は、向うから転げこんで来たじゃないか。プリンス、オヴ、ウェールス岬――つまり P. R. WALES はその略記号なのだ。これで読めた。この暗
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