帆村探偵はこれを P《ピー》. R《アール》. WALES《ウェールス》[#「WALES」は底本では「WALE S」] と読んだ。
「デジネフ。それからピー、アール、ウェールス?」
 なんのことだろう。人の名前のようでもある。――帆村はもうこの階段に用がなかった。これから用のあるのは百科事典だった。彼は元気百倍して、そこに通りかかった円タクを呼びとめると都の西北W大学の図書館へ急がせた。
 夜が明けたばかりのことで、宿直員は蒲団《ふとん》を頭から被ってグウグウ睡っていたが、彼はこんなときに役に立つとは思わず貰って置いた総長T博士の紹介状を示して、急用のためぜひ書庫に入れてもらいたいと頼んだ。宿直員は睡いところを起されたのでブツブツこぼしていたが、それでもチャンと起きてオーバーを取り、自《みずか》ら鍵をもって図書館の入口を開けてくれた――。帆村は礼もそこそこに、ドンドンと書庫の奥深くへ入っていった。
 そこで彼は、尨大《ぼうだい》な外国人名大辞林をとりだすと、卓子《テーブル》の上にドーンと置いた。
「デジネフデジネフ。さあ、早く出て来い」
 といって探した。しかし彼の期待は外れた、
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