嗟《とっさ》に彼は決心をした――が、どうして登るというのだ? そこは足場もない高い高い鉄管の中だった。ああ、折角《せっかく》の抜け道を発見しながらも、人間業《にんげんわざ》では到底これを登り切ることはできないのか。いや、何事も慌ててはいけない!
「うん。――こうやってみるかナ」
 彼はポンと膝を叩《たた》いた。彼の目についたのは、鉄管と鉄管との継《つ》ぎ目であった。それは合わせるために一方が内側へ少し折れこんでいて、その周囲にリベットが打ってあった。――そいつが足掛りになりはしないか。彼は靴を脱ぎ靴下を取って、跣足《はだし》になった。そして靴下は、ポケットへ、靴は腰にぶら下げると、壁に高く手を伸ばして、そこらを探ると、幸いに指先に手がかりがあった。そこで十の爪に全身の重量を預けて、器械体操の要領でジワジワと身体を腕の力で引上げた。俄《にわか》に強い自信が湧いてくるのを感じた。
 全てが忍耐の結晶だった。
「ウーン、ウーン」
 彼は功を急がなかった。ユルリユルリと鉄の管壁を攀《よ》じのぼっていった。だから、到頭二十メートルもある高所に登りついた。――そして、彼の頭はゴツンと硬い天井を突き
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