で、見よう見真似で、足踏みでもしているのだろうと思っていたところ、突然ガックリと頭を垂れた。
「これァいけない!」
と驚いて帆村が叫んだのがキッカケのように、かの洋装の麗人は呀《あ》っという間もなく崩れるように地面に膝を折り、そして中心を失ってドタリと鋪道の上に倒れてしまった。
「脳貧血かしら……」
帆村は息せききって、彼女の倒れている場所へ駈けつけた。近くにいた人たち五、六人が駈けつけたが、ワアワア騒ぐばかりだった。帆村はその人たちを押しのけて前へ出た。そして誰よりも先に、倒れている婦人の脈搏《みゃくはく》を検《しら》べた。――指先には脈が全然触れない。つづいて、眼瞼《まぶた》を開いてみたが……もう絶望だった。
「おお……死んでいる!」
「たいへんだ。若い女が倒れた」
「自殺したんだそうだ。桃色の享楽《きょうらく》が過ぎて、とうとう思い出の古戦場でやっつけたんだ」
「イヤそうじゃない。誰かに殺されたんだ。恐ろしい復讐なんだ!」
なにがさて、物見高い銀座の、しかも白昼の出来ごとだから、たちまち黒山のような人だかりとなった。もし帆村探偵が死にものぐるいになって喚《わめ》きながら群衆
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