ト猿がパッと飛出して、鼠の後を追いかけた。首領はハッと身を避けて、この小動物の追駆けごっこを見送った。他の黒装束の連中も思わず、ゾロゾロと前へ踏みだした。そのとき「赤毛のゴリラ」の影のように寄り添った黒装束の一人が素早く何か囁《ささや》いてソッと手渡したものがあった。――猿は室《へや》の隅でとうとう鼠を噛み殺してしまった。一座は元のように整列した。「右足のない梟」は、そこで再び厳かな口調で叫んだ。――
「――『赤毛のゴリラ』よ、地下に瞑せよ」
ズドン。――と銃声一発。首領の手には煙の静かに出るピストルが握られている。
だだだだッと、「赤毛のゴリラ」は銃丸のために後に吹きとばされドターンと仰向《あおむ》けに斃《たお》れてしまった。そして石のように動かなくなった。
「これで第二号礼式を終った」と首領は恐ろしい礼式の終了を報じたが、このとき何を思ったものか、一座をキッと睨んで声を励《はげ》まして叫んだ。「――R団則の第十三条によって本員を除く他の臨席団員の覆面を脱ぐことを命ずるッ」
覆面を脱ぐ第十三条――それは極《きわ》めて重大な命令だった。覆面を脱げば、たいてい死刑か本国送還の何《い
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