らしい怪しげな舞踊を始め、変な節で歌うのであった。可哀想に彼の若者は気が変になっているらしかった。
帆村は気の毒そうにその人の舞踊をみていたが、どうしたのか、ハッと顔色をかえると、顔を硝子窓《ガラスまど》に擦《す》りつけて叫んだ。
「うん、あれは確かに須永に違いない。どうして気が変になってしまったんだろう」
右足のない梟《ふくろう》
此処《ここ》は或る広間の中のことであった。この部屋を見渡して、たいへん不思議に思うことは、窓が一つも見えない上に周囲の壁がのっぺらぼうで扉《ドア》が一つも見えない。どこから出たり入ったりするのか分らない、何階の部屋だかも分らない、しかしその広間には、凡《およ》そ二十|脚《きゃく》ほどの椅子がグルッと円陣をなして置いてあり、その中に、特に立派な背の高い椅子が一つあるが、その前にだけ、これも耶蘇教《やそきょう》の説教台のような背の高い机が置いてあった。人間の姿は見えないが、どうやら会議室らしい。
と、突然どこからともなく妙な音楽が聞え始めた……と思っていると、いつの間にか置かれた椅子の前にマンホールのような丸い穴がポッカリと明いた。その隙間
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