あげて、いろいろと組み合わせていたが、やがて遂に叫んだ!
「うん、とけたらしい。――八日、デジネフ、ピー、アール、ウェールスか!」
はて、どうしてそんな事になるのであろうか?
恐ろしき予感
帆村探偵は漫画の水兵の画から「八日、デジネフ、ピー、アール、ウェールス」を次のような見方をして、取り出したのだった。
まず水兵さんの帽子と丸い顔の輪廓とが8の字をなしている。それから、口に銜《くわ》えたパイプの煙をみると、それが渦を巻きながらも左にT、右にHの字に読める。これを合わせると 8TH《エイツス》[#ルビの「エイツス」は底本では「エイス」] となるのである。
「エイツス」とは八日のことである。
これで日附の符号は解けた。
次に分りやすいのは、水兵さんの足許《あしもと》の左に石塊《いしころ》のようなものが落ちているが、これはどうみてもDという字がひっくりかえっているとしか思えない。それからこんどは、水兵さんの右足(というと画面では向って左の方の足のことである)は、靴を履いているようであるが、それはどうやらEという字が左へ倒れているもののようである。それから向って右の、水兵さんの左足《さそく》をみると、これはどうみてもZという文字にちがいない。――これでDEZ《デズ》と出た。
その右方に、これを書いた画家のサインらしいものが見える。H《エッチ》 Nev《ネブ》 とかいてあるらしいが、この「エッチ・ネブ」という綴《つづ》りを上の「デズ」に加えてみると俄然《がぜん》、DEZHNEV《デジネフ》 となって、それで一つまた解けた。
それから次が、ちょっとむずかしい。
この水兵さんが口に銜えているのはパイプであるが、どうも変な形である。そこでパイプの頭を上に立ててみると、これがPという字になる。それから水兵さんの胴中がRという文字になっている。
まだ文字が隠れている。
水兵さんの向って左の手がWという字になる。そしてその反対の方の手は、Aという字になっている。それは誰にもよく分る。まだある! この水兵さんの鼻を見るがよい。これはどうもLという字に似ているようだ。それからこの口は、変に曲っているが、なんとなくSという文字を横に寝かして、上から叩きのばしたように見えるではないか。――結局これを全部集めてみると、WALES《ウェールス》 という文字ができる
前へ
次へ
全39ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング