ね」
「いや、試作|伺《うかが》いのこともあるし、予算のこともあるし、工場や資材の関係もあって、おれの思うようにはいかないんだ。なにしろ、まだわが国は貧乏国《びんぼうこく》で、資材は足りないし、製作機械もずいぶん足りないし、技術者の数も少ない。うんと整備しなければ、アメリカやソ連やドイツについていけない」
「なるほど。すると、まだまだ祈願《きがん》をしなければ、日本はりっぱになりませんね」
「そのとおりだ。――そうだ、今日は、一度この設計図を部隊長殿にごらんに入れることにしよう。おい工藤。部隊長殿は御在室《ございしつ》か、ちょっと見てきてくれ」
「はい」
工藤は、岡部の命令で、すぐさま部屋を出ていった。
岡部伍長は、やっと設計を終ったので、さすがにほっとして、机に頬杖《ほおづえ》をついた。すると、どこからともなく、ぷーんと、いい匂いが鼻をうった。
「おや、へんだなあ。このいい匂いは、酒だ! どこに酒があるのかしらん」
伍長は立ちあがって、あたりを見まわした。どうも、よくわからない。彼は、鼻をくすんくすんいわせながら、机のまわりを歩きまわっていたが、そのうちに気がついたのは、工藤上
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