なるほど、そこは、ひろびろとしている。三十万坪はあろう。
 芝草らしいものが生えているが、草は、同じくらいに、短くかられている。ねころがっても、いいようなところであった。
「これは、いいところだなあ。ここなら、もぐらを放すのには、もってこいの土地だ」
 一郎がもぐらを買いしめたわけは、夜になって、もぐらを放って、生きている地下戦車であるもぐらが、土を掘るところを見るつもりだったのである。
「草のみじかさかげんも、これならおあつらえ向きだ。もぐらさん、さあ放すから、どんどんここを掘ってみておくれ」
 一郎は、車のうえから、箱を下ろして、その入口を開いた。箱のうしろを叩くと、もぐらは、おどろいて、われがちに、せまい入口からぞろぞろと、とびだした。
 淡い月光の下に、草原をもぐらの大群が、突撃隊のように、ころころと、はっていくところは、なかなか風《ふう》がわりな風景であった。一郎は、地下戦車長になる前に、もぐら隊長になろうとは、ゆめにも考えていなかった。
 一郎は、十五円のもぐら隊のあとから、にこにこ笑いながら、様子を見まもっていた。
 なにしろ、もぐらの数は多いし、それに、ここは、べらぼう
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