未来の地下戦車長”と、また書き始めたのであった。
「おや、岡部。お前、なかなか字がうまいじゃないか」
 とつぜん、うしろで、係長の小田《おだ》さんの声がした。
「いやだなあ、ひやかしちゃ……」
 と、一郎は、きまりが悪くなって、顔をあかくした。
「なんだい、この“未来の地下戦車長”というのは……」
 小田係長は、にこにこ笑いながら、うしろから一郎のあたまをおさえた。
「うわッ。いたい」
 と、一郎は、係長さんの手を払《はら》って、その場にとび上った。
「あれッ。どうした。どこがいたい」
「係長さん、ひどいや。僕の頭に、いたい瘤《こぶ》があるのに、それを上から、ぎゅッとおすんだもの」
「ははあ、瘤か。そんなところに瘤があるとは知らなかった。地下戦車長岡部一郎大将は、はやもう地下をもぐって、そして、そんなでかい瘤を、こしらえてしまったのかね」
 係長さんは、うまいことをいった。
 一郎は、こまってしまった。
 そこで彼は、未来において地下戦車長を志《こころざ》すわけを、係長に話をした。
「そうかい、これはおどろいた。君は、本気で、地下戦車を作るつもりなんだね」
「そうですとも」
「それで、
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