。阿弗利加の原地人は、こいつを槍や矢の先に塗って敵と闘いますが、これが傷口から入ると心臓|麻痺《まひ》をおこします。用量が極《きわ》めてすくなくてよいので効目《ききめ》があるのです」
「そんな毒薬をよく、川丘みどりがたやすく手に入れたものですね」と警部が疑い深そうに言った。
「僕はみどりが犯人だと、まだ断定していない」と検事が弁明した。
「それからもっと面白いことがあります」と帆村探偵は構わず話をつづけた。「牌を拡大レンズで観察してみましたところ、重大な発見をしました。彫りのある角《かど》のところに、細くて白い繊條《せんじょう》が二三條附着しています。これは犯人が毒薬を、あとで拭きとった時に用いた材料が何であるかを語っていると思います。ピンセットで採取したものについて簡単な試験をしてみましたところ、それは脱脂綿《だっしめん》であることが判りました」
帆村探偵の説はあまりに明瞭なので、検事と警部は感歎する言葉もなく黙ってしまった。
「しかし」と帆村探偵はここで急にガッカリしたという様子で語調を改めた。「私のこの説は、犯人がどんな方法で松山を殺したか、それを説明したのに過ぎません。松山が
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