麻雀殺人事件
海野十三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)目下《もっか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)麻雀|倶楽部《クラブ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)勝負ごと[#「ごと」に傍点]に
−−

     1


 それは、目下《もっか》売出《うりだ》しの青年探偵、帆村荘六《ほむらそうろく》にとって、諦《あきら》めようとしても、どうにも諦められない彼一生の大醜態《だいしゅうたい》だった。
 帆村探偵ともあろうものが、ヒョイと立って手を伸ばせば届くような間近《まじ》かに、何時間も坐っていた殺人犯人をノメノメと逮捕し損《そこな》ったのだった。いや、それどころではない、帆村探偵は、直ぐ鼻の先で演じられていた殺人事件に、始めから終《しま》いまで一向気がつかなかったのだというのだから口惜《くや》しがるのも全く無理ではなかった。
「勝負ごと[#「ごと」に傍点]に凝《こ》るのは、これだから良くないて……」
 彼はいまだにそれを繰返しては、チェッと舌を打っているところを見ると、余程《よほど》忘れられないものらしい。彼
次へ
全38ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング