よ予審判事さん。どうして彼は私をうまく使いこなしたのです。
「そりゃ判っているじゃないか。お前は夢というものをどう考えているか、などということについて、いつもその友人にくどくどと話をして聞かせる病があったというじゃないか。それですっかり利用されちまったのだ」
 というのだよ、君。乃公は憐れむよ、予審判事さんの苦労性をね。君は乃公のことを利用して、自分は手を下さずして君の妻君を殺させたといっているのだからね。随分失礼な人じゃないか。これがまあ幸いにも、夢の中での出来ごとなのだから忍べるが、本当の世の空間に起ったことだったら、そいつは助からない話じゃないか。
 しかし予審判事さんは、あくまで執拗なんだ、困ったね。
「お前は夢の中の話だというが、それは間違いだよ。それでも夢だと思っているのだったら、その思い違いであることを証明してやろう……」
 と云うのさ。――じゃ、どうするんです! と聞いてやったら、乃公のことを鏡の前へ連れていってね、
「どうだ、この鏡にうつっているお前の顔は、お前の夢の中の顔か、それとも現実の世におけるお前の顔か」
 と訊ねるじゃないか。見ると、乃公の顔は青白くて、弱々
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