だ。年配の男もあれば、妙齢の女もある。……乃公はその不思議な人物たちと、永い物語の次をまた続けてするように、前後があった話をし合うのだ。しかしどっちかというといつも似たようなことを繰返していて、ああ、この次はこうなるな――と思うと、きっとそのようになってゆくのだ。おかしいほど、乃公の想像が適中するのだよ。それからもう一つ奇妙なことがある。それは乃公のこの顔だ。その夢の中で、乃公は一つの顔を持っているが、その顔というのが、なんと今君が見ている乃公の顔とは全然違った顔なのだ。顔色だってこんなに青白いんではない、赤銅色に赭《あか》いとでもいうか。顔の寸法も、もっと長く、鼻はきりりとひきしまり、口もたいへんに大きくて、そして眼光なんか、実にもう生々としているのだ。その上に、頭髪なんども、毛がふさふさとしていて立派だし、それに勇ましい髭なんか生やしているんだ。――その豪そうな顔の男が夢の中の乃公なのさ。どうだ、随分と不思議な話だろう。だから乃公はどうかすると変なことを考えるんだ。あの夢に見る町や人々がどこかにチャンと実在するのじゃないか。乃公の魂は一つだけれど、顔の違った二つの肉体を持っているの
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