ゃめん》にのりあげたんだ」
「みなさんは、どうしました」
「……む」
 博士は、しばらくうなっていたが、
「かなり、ひどいけがをした。が、まあ、そのことに気をつかわないのがいい。とにかく、お前が大丈夫なら、こんな幸いなことがない。風邪《かぜ》をひかないようにして、夜の明《あ》けるのを待とうよ」
 博士は、やさしいうちに、道彦を力づけた。そして彼の口にぷーんといい匂いのする葡萄酒《ぶどうしゅ》の壜をあてがった。夜明までにずいぶんながい時間がかかったように思った。しかし、東の空が、うっすらと白みかかったのがわかったとき道彦は、とびたつほどうれしかった。
「先生、夜が明けてきました」
 博士は、横の座席で、これも毛布をうんとからだにまきつけ、だるまさんのようなかっこうになってねむっているようであった。
「先生、先生!」
 道彦は、博士をよんだ。しかし博士は、それにこたえなかった。
 道彦は、立ちあがって、博士をゆりおこしにかかった。だがそれはむだであった。博士は、こんこんとしてねむっていた。
「……もしや、先生は、死にかかっていられるのではないかしら。そうだとすると、だれかをよんで、なんとか
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