ひそめて、窓ガラスのところへ、ひたいをすりつけ、
「……あの雲は、いやな雲だなあ。ほう、風が出てきたらしい。雲がうずまいて、うごきだしたぞ」
と、しんぱいそうである。
「先生、すると、空はあれますか」
「うむ、一《ひと》あれ、きそうだ。大吹雪《おおふぶき》がやってくるぞ。おお、機はいよいよ高度をあげだしたぞ」
そばに、高度計がかかっていたが、その指針は、生きもののように、ぐるぐるうごきだした。さっきまでは高度八千のところを指していたのが、八千五百になり、九千になり、そしてまだその上になっていく。しゅうしゅうと、酸素が室内へおくられはじめた。おしよせる雲のうえに、うまく出られればいいが……。
しかし、ついにいやな運命がやってきた。
「先生、エンジンの音がへんですね。そう思いませんか」
ヤヨイ号には、四つの発動機がついて、さっきまでは、ゴーンゴーンとこころよい響《ひびき》をだしていたのが、ここへ来て、急に調子がわるくなって、ときに、するするッととまる。それからしばらくして、またぶるぶるンとまわるのであった。寒冷《かんれい》のため、エンジンがどうかしたのだ。
雲は、いつしか機のまわ
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