たのです――但し一匹を除いてはネ」
「一匹ですって?」私は思わず大声に訊《き》きかえしました。「一匹は逃げなかったんですか」
「そうなんだよ、民ちゃん」と今度は兄が横から引取って云いました。「一匹だけ、僕等の手に捕《とら》えることができたんだよ。それも、お前の手柄から来ているんだ」
「手柄ですって? なんだか、なにもかも判らない尽《づく》しだナ」
「そうだろう。いや、夜が明けると、何も彼《か》もが、まるで様子が違っちまったのだからネ」
そういって、やがて兄が顛末《てんまつ》を話してくれました。それはまったく思いもかけなかったような新事実でありました。
谷村博士の研究録
兄は、私から渡された例の白毛《しらげ》のことを思い出し、それの正体《しょうたい》を一刻《いっこく》も早く知りたい気持で一ぱいで、小田原の警備隊の中からひとり脱け出でると、この谷村博士邸へ帰ってきたのだそうです。私はいま、博士|邸《てい》に来ているのだそうですから、驚きますネ。
兄はこの怪物について、きっと博士の研究があるものだと考え、博士夫人の力を借りて研究室をいろいろ探したのです。すると果して書類函
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