になってきましたよ」
 兄はひとりで悦《えつ》に浸《ひた》っていました。


   化物追跡戦《ばけものついせきせん》


「とにかく此《こ》の白毛みたいなものを早速《さっそく》東京へ送って分析して貰うことにしましょう。分析して貰えば、これが地球上に既に発見されているものか、それとも他のものか、きっと見分けがつくと思いますよ」
「なるほど、なるほど。いいですね」と白木警部は大きく肯《うなず》きました。
 そのとき先頭に駆《はし》っている自動車から、ポポーッ、ポポーッと警笛《けいてき》が鳴りひびきました。
「なんだ」
「イヤ警部どの、もう小田原へ入りましたが、ちょっと外を御覧下さい」
「うむ――」
 警部さんにつづいて私達も外を覗《のぞ》いてみました。両側の家は、停電でもしているかのように真暗《まっくら》です。しかしヘッド・ライトに照らされて街並《まちなみ》がやっと見えます。ああ、何たる惨状《さんじょう》でしょうか。
「うむ、これはひどい!」
「まるで大地震《おおじしん》の跡のようだッ」
「おお、向うに火が見えるぞ」
 近づいてみると、それは町の辻《つじ》に設《もう》けられた篝火《かがり
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