葉を停めてから「それだと黒田君の足跡のある近所に怪物の足跡も一緒に残っていなければならんと思いますがネ」
「さあそれは今のところ僕にも判らないんです」と兄は頭を左右に振りました。
 そのとき家の方にいた警官が一人、バタバタと駈け出してきました。
「警部どの、警部どの」
「おお、ここだッ。どうした」
 ソレッというので、先程の異変に懲《こ》りている警官隊は、集まって来ました。
「いま本署に事件を報告いたしました。ところが、その報告が終るか終らないうちに、今度は本署の方から、怪事件が突発したから、警部どの始め皆に、なるべくこっちへ救援《きゅうえん》に帰って呉《く》れとの署長どのの御命令です」
「はて、怪事件て何だい」
「深夜の小田原《おだわら》に怪人が二人現れたそうです。そいつが乱暴にも寝静まっている小田原の町家《ちょうか》を、一軒一軒ぶっこわして歩いているそうです」
「抑えればいいじゃないか」
「ところがこの怪人は、とても力があるのです。十人や二十人の警官隊が向っていっても駄目なんです。鉄の扉《ドア》でもコンクリートの壁でもドンドン打ち抜いてゆくのです。そして盛んに何か探しているらしいが
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