リット少将は椅子から立ちあがった。
この巨弾は、少将の思ったとおり、ハバノフ氏の好奇心をたいへんうごかした。
「ああ、昨日貴官の前から逃げだした杉田とかいう日本の水兵が、また捕まったのですか。それは一つ、ぜひ見せていただきたい」
ハバノフ氏は無礼にも、まるで見世物を見るような口のききかたをした。
杉田二等水兵といえば、川上機関大尉に助けられて倉庫の中に身をひそめていたはずだった。彼は探し出されてまた捕らえられたらしいが、なぜまたおめおめと敵の手に落ちてしまったものだろうか。
「さあ、私について、こっちへいらっしゃい」
リット少将はハバノフ氏をうながして、客間から奥に通ずる扉《ドア》を押して入ってゆく。
悩ましき捕虜
杉田二等水兵は、飛行島の最上甲板にある「鋼鉄の宮殿」の一室の豪華な寝台の上に寝かされていた。
そこはリット少将の居室からへだたることわずか六部屋目の近さにあった。
彼はすっかり体を清められ、そしてスミス中尉のピストルに撃たれた胸部は、白い繃帯でもって一面にぐるぐる捲きつけられていた。
枕許には、英人のドクトルが容態をみまもり、そのほか二人の英国
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