ケント兵曹は、あきれ顔で大尉の顔を見上げた。
「――で、でも、そんなことがあろうはずがありません。機関部は上を下への大騒動でありました。上官にその報告が行っていないなんて……」
フランク大尉は、それを聞くと、何を思い出したか、
「そうだ。ふむ、あれかもしれぬ」
「えっ、なんとおっしゃいます」
「うむ。実は今から三十分ほど前、リット少将の副官から電話がかかってきて、『飛行島の三十六基のエンジンのうち、調子の合わないものが二三あるらしく、司令塔のメートルをみていると、あるところへ来ると、変な乱調子が起る。だから、貴官はすぐさま、三十六基のエンジンの仕様書と試験表とを各班からあつめて、すぐこっちへ持ってこい』という命令だ。そこで俺は、あとをゼリー中尉にたのんで、さっそく仕様書と試験表をあつめに出かけたのだ」
「おや、そんなことがありましたか。そのゼリー中尉が、真先にぶっ倒れたのですが、御存じでしょうな」
「いや、知らない。その報告も受けていない」と、フランク大尉はつよくかぶりをふった。
「俺は、試験部へ行って、リット少将閣下が命令せられたものを集めるのに夢中になっていた。ところがその仕様書
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