ている。
梨花は扉《ドア》のそとに小さくなっている。
杉田二等水兵は、上官の正体が見破られはしないかと、ベッドの中ではらはらしている。しかし川上機関大尉はおちつきはらって、窓枠に硝子板をはめて、パテをつめている。
そこへ駈けこんできたのが、スミス中尉であった。スミス中尉が駈けこんでくる時には、きっと一大事が起っているものと考えてよい。リット少将は、またかというような顔をして、看護婦の肩から手をはなした。
「閣下、一大事でございます」
「どうもそうらしいね。労働者がさわぎだしたとでもいうのか」
「いえ。そんなことではありません、香港経由の東京電報です。これをごらんください」
と、スミス中尉はリット少将の前に、数枚の紙片をさしだした。
窓枠にのぼっている川上機関大尉の眼がぎょろりとうごく。
「うーむ、――」
とリット少将は紙片を見つめたまま、ひくいうめきに似た驚きの声をあげた。
「横須賀軍港付近において英国水兵殺害さる。加害者は日本少年。――ふーむ、なんという野蛮な国だろう」
と、少将は自分の国のずるさや野蛮さは棚にあげて、つぶやいた。
次の一枚の電文には、その事件がくわし
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