をうつ。それでも、いささかもひるむ気色なく、墨をながしたような前方の深い闇を、じっとにらんでいる。
そのうちに風は雨を含んでますますつのり、舳を越えてどどっと崩れかかる波浪はますますたけりくるう。艦体は、前に後に、左に右にとゆれながら、海面を縫って難航を続けた。
しばらくして、ジジジ……と電話のベルが鳴った。
下士官は右手をのばして電話機をとりあげた。
「はあ、艦橋当直」
「こっちは艦長だ。どうだ入野《いりの》一等兵曹、あと三十|浬《かいり》で飛行島にぶつかる筈だが、西南西にあたって、なにか光は見えぬか」
「はい、なにも見えません。只今艦橋は豪雨と烈風にさらされ、全然遠方の監視ができません」
「そうか。苦しいだろうが、大いに頑張ってくれ。なにか見えたらすぐ知らせよ」
「はっ、畏《かしこ》まりました」
それから十分ほど過ぎた。
雨脚が急に衰え、雲が高くなったようである。
艦橋に立つ入野一等兵曹は、行手にあたって、ほの明るい光のかたまりを見出した。夜光の羅針儀の蓋をとってみると、その光物は正に西南西の線上にあった。
「おお、あれこそ飛行島にちがいない」
入野は直ちに電話機をと
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