ると、赤、青、黄、いろとりどりの標識灯が、飛行島の艦形をあらわしている。
護衛の飛行隊は、ずっと前方に出ていっているようだ。
両舷の彼方には、駆逐艦の灯火が見える。天候のせいか、それとも飛行島のあおりをくってか、駆逐艦は大分動揺しているようだ。
囂々《ごうごう》たる機械音が、闇と海面とを圧していた。
飛行島の警衛は、完全のようであった。
いまは試運転中ではあるけれど、このような大袈裟な陣形が、やがて飛行島の渡洋攻撃のときにも採用されるのではなかろうか。
リット少将は、艦隊司令官になったような気で、大得意であった。
その時、副官が、リット少将の背後に近づいて声をかけた。
「閣下、警備飛行団長から、祝電がまいりました」
「ほう、祝電が」
「飛行島の竣工と、無事なる試運転を祝す――というのであります」
「無事なる試運転か。そうじゃ、この分なら試運転もまず無事に終りそうじゃな」
その通りであった。いま試運転が終ろうというのに、ただの一回も、非常警報の警笛をきかない。彼の重任は、紙を一枚一枚めくりとるように、軽くなってくるのであった。このかたい護衛の網を破って、うかがい寄る曲者があろうとはどうしても思えなかったからである。
「閣下、また祝電がまいりました」
「ほう、すこし気が早すぎるようだが、こんどは誰からか」
「警備艦隊司令官からです」
「おおそうか。いよいよほんとうに、試運転は無事終了らしい。これは思いがけない幸運だった。外国のスパイ艦艇は一隻も近よらなかったし、これでわしは、世界中の眼をうまく騙しおおせたというわけかな。あっはっはっ」
リット少将は、心から、安堵の色をみせるようになった。
「では、艦内検閲点呼を命令せい。これで試運転は無事終了ということにしよう。警備隊の方へも、同様にしらせるがいい」
「はい、かしこまりました。全艦および警備隊に、検閲点呼を命じます」
副官は、通信班に通ずる伝声管のところへかけつけた。
号令は、全艦隊にひろがった。
全速力航進のもとにおける検閲点呼は、もっとも重大な意味があった。乗組員なり機関なりが、どんな工合にはたらいているかが、もっとも明らかに知れるのである。
この検閲点呼がすむと、飛行島をはじめ全警備隊は、速力をゆるめ、方向を百八十度転じて、夜明までに元の位置にかえることになっていた。
おそらく近海の寝坊
前へ
次へ
全129ページ中92ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング