何をいわれてきたのであろうか。
川上機関大尉は、相変らずフランクを嘲笑するようにおちつきはらって、エンジンの操作をつづけるのであった。ああ、それにしても何という奇妙な事実であろう。彼はフランク大尉のピストルの監視下にあって、敵国のために最も重大な役わりを懸命に果しているのであった。
試運転成功
こちらは司令塔の中である。リット少将は一分も隙のない軍装に身をかため、すこぶる満悦の面持であった。
「副官、すばらしいのう。飛行島は設計以上の出来ばえじゃ」
飛行島建設団首脳部は、いつの間にやら、大航空母艦飛行島司令官および幕僚となっていた。
「リット閣下のおっしゃるとおりです。この上は、飛行島の威力をひた隠しに隠して、他日○○国と戦いをまじえますときに、敵の度肝を奪ってやりたいものですね」
副官はそういって、やがて○○国攻略の海戦に、この飛行島を参加させ、○○湾付近で大手柄をたてるであろうところを想像して、にやりとほくそ笑んだ。
「そうです、そのことです。飛行島の秘密をあくまで隠しおおすことですが――」
と、突然口をはさんだ青年士官があった。それは外ならぬリット少将お気に入りのスミス中尉であった。川上機関大尉の拳固の固さをしみじみと知っているあのスミス中尉であった。
「ああ、私はそれが心配でなりません。いまこの飛行島に働いている技師と労働者は、その数が三千人にのぼります。印度人あり、中国人あり、フイリッピン人あり、暹羅《シャム》人あり、それからまたソ連人、アメリカ人、フランス人、わが英人など、およそ世界各国の人種をあつめつくしている観があります。やがてこの飛行島の工事がおわり、彼等が夫々《それぞれ》故国にかえった暁にはどうなりましょうか。この飛行島の秘密は、いやでも洩れてしまいます。この工事は、はじめからこの点に手ぬかりがあったようです。すべて英人と印度人だけではじめるべきでした」
「なにをいうか。スミス中尉」とリット少将はかるくいましめて、
「そんなことは心配ない、今からそういうことを問題にして、つまらぬ騒をおこさせてはならぬ」
「ですが、閣下。私はほんとうに心配なのです」
「これ、もうよしたまえ、そんな話は――」
と副官がたしなめたが、スミス中尉は、ひっこんでいなかった。
「だが、これほど重大問題を、このままにしておいてよいでしょうか。ことにわ
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