通り片づきましてございます」
「ふーん、片づいたか、一通り?」
 と、腹の立っているところを皮肉の一言でやっとおさえつけ、
「――で、結果はどうなったか」
「はい、ほんとのカワカミと思われる者を選びだしましたから、閣下に見ていただこうと思います。おーい、こっちへ連れてこい」
 とスミス中尉が、隣室に向かって叫べば、
「おう、――」
 とこたえて、大勢の試験委員が縄尻をとって引立ててきたのは、後手にくくられた七名の東洋人!
「なあんだ、この中のどれがカワカミか」
 と、リット少将は呆れた。
 スミス中尉は、澄ましたもので、
「ここまでは、カワカミらしき者を選りだしましたが、これ以上区別がつきません。あとは閣下のお智恵によりまして、御判別をあおぎたいと考えます」
 スミス中尉は、今まで数回川上機関大尉に出くわしているのであるが、いつも巧みな変装姿だったので、素顔を知らない。事実、見分けがつきかねているのだった。
 なるほど、どれも、見れば見るほど、この間の硝子屋によく似ている。
「なんじゃ、わしにこの七名の中から、本物のカワカミを選びだせというのか」
 リット少将とて、同じことであった。
 少将は、奥にひっこんだ眼をぎょろりと光らせながら何事かしばらく考えこんでいたが、
「ちょっと耳を貸せ、スミス中尉」
 中尉は、はっと答えて、少将の前に頭をさしだした。少将は、二言三言、なにかしら囁いた。
 スミス中尉の顔色が、このとき蒼白にかわった。
 それも道理であった。少将は、賞金はどうするつもりなのか、「七名の中から一名をとるに及ばぬ。七名とも残らず射殺してしまえ」と、常になき断乎たる命令をいい放ったのであった。
 ああ何たる非道! 射殺されることになった罪なき七名の運命こそ、哀《あわれ》ではないか。
 いや諸君、それよりも気がかりなのは、この七名の中に、本物の川上機関大尉がいて、彼等と運命を共にしたのではあるまいか。もし、そうだったら帝国の安危にかかわる重大使命はどうなるというのだ。


   闇夜の試運転


 予定からちょうど二十四時間も遅れて、海の大怪物浮かぶ飛行島は、いよいよその巨体をゆるがせつつ、しずかに海面をすべりだした。
 墨をながしたような闇夜だった。
 ああなんたる壮観であろうか!
 これがもし昼間であったら、飛行島の乗組員たちは、手のまい足のふむところをし
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