だだん、がんがんがん。
あっちからもこっちからも、高射砲は砲弾を撃ちあげた。そのため約千五百メートルから二千メートルのあたりが、まるで両国の大川開きの花火のようだった。
ところが、その次の瞬間であった。甲板のすぐ真上に、ぱらぱらぱらと弾けるような音がして、眼もくらむようなマグネシウムの大光団が現れた。その光団はしずしずと風にあおられて流れる様子だ。飛行甲板の上は、真昼のように照らし出された。日本の飛行機が、光弾を放ったのだった。
照空灯は、幾条も幾条も一つところへ集ってきた。二千メートル以上の上空をとんでいる日本機の翼に、照空灯が二重三重四重に釘づけになっている。
「誰かあれを飛行機で追いかける者はいないか」
と、司令塔の上ではリット少将がせきこんで叫んでいた。が、誰もこれに応ずる者はなかった。無理もない。味方の砲撃の間を縫って、日本機を追いかけるのは、自殺行為と選ぶところがないではないか。
日本機は、癪にさわるほど悠々と二千メートルの高空をぐるぐるまわっていた。高射砲弾はぱっぱっと花傘をひらいたように、日本機の前後左右に炸裂する。こんどこそは砲弾が命中して、機体はばらばらにとび散ったかと思われる。がしばらくすると煙の横から、日本機は悠々と白い腹をくっきりと現すのであった。
一方飛行島上の怪しい火事騒ぎは、ともかくもおさまった。高射砲弾の炸裂する数も、なんだかすくなくなってきた。なぜか日本機は、光弾を落したきりで、ほかに一発の爆弾も落さなかったのだ。
一所《ひとところ》に釘づけされたようになっていた照空灯が、右に左に活溌に首をふりうごかしはじめた。監視中の日本機はどこへ行ったか、急に姿を隠してしまったのである。
怪しき記号
日本機の姿が見えなくなってしまうと、飛行島の人々は、ほっと息をついて、おたがいの顔を見合わせた。
「あれはやはり日本の飛行機だったのかなあ」
「もちろん、日本の飛行機でなければ、どこの国の飛行機があんな風に大胆にやってくるものか」
「そうだ、やっぱり日本の飛行機だよ。あのとき、怪しい男が無線室を襲ったり、それから数箇所に火の手があがったりしたではないか。この飛行島に日本のスパイが忍びこんでいて、あの飛行機と何か連絡があったのではないだろうか」
全くそのとおりであった。無線室を襲って失敗したのも川上機関大尉であったし
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