いですか。あの長江の出口を止めちまうのです。するとあの夥《おびただ》しい水量は、海へ注ぐことが出来なくなってしまう。するともう向うは一遍で降参をしてしまいます。」
社長「どうも判らないですナ。」
小僧「判ってるじゃないですか。いつか長江の流域八百里に亙《わた》って大洪水があって困ったということがありましたろう。あれの十倍も二十倍も恐ろしいやつをやろうというのです。あの流域全体が水漬《みずづ》かりになっては、もう戦争は出来ません。」
社長「そりゃ巧い話だが長江の出口を止めるなんて、そんな大変なことが出来るものですか。」
小僧「そこがこの話ですよ。いいですか。大きな汽船の胴中に大きな製氷器械を据えつけるのです。つまり舷側《げんそく》にふれる水は、直ちに氷となるような仕掛けをするのです。そんな汽船をドッサリ作って――それの設備はみな貴方が国家へ寄附するのですが――それを長江の出口へ派遣して、昔あった閉塞戦《へいさいせん》に似た氷鎖戦《ひょうさせん》をやるのですよ。貴方の名誉は大変なものですぜ。」
社長「それはいいが、一体汽船はいくつ位あればいいのです。」
小僧「まず二百|艘《そう》ですかナ…
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