ものと思わなければならない。
 このままでは、トラ十は、箱をひったくって、中をあらためるであろう。しかしトラ十には、これが、そんなに貴重なものとはわからないから、中身をあらためると、なんだ、こんなきたならしいものと、海中へ捨ててしまうかもしれない。そんなことがあればたいへんだ。帆村探偵のこれまでの苦心も水の泡《あわ》だ。
 ああ帆村探偵は、いかにして、このX塗料を守るであろうか。

   洋上《ようじょう》の死闘《しとう》

「早くその箱をこっちへ出せ。なにをぐずぐずしとる!」
 トラ十は、こわい顔をしてどなった。
 帆村探偵は、進退極《しんたいきわ》まった。
「なぜ、出さん。命の恩人たるおれの命令に、そむく気だな。よーし、お前がそういうつもりなら、早いところ、片をつけてやる。かくごしろ」
 言下《げんか》に、トラ十の手に、きらりと光ったものがある。
「あ、ピストル!」
「そうだ。お前の命はおれが助けた。この船に、助けてやったからなあ。ところで、お前は、おれのいうことを聞かない。そういう恩知らずのお前なんぞを、これ以上、だれが助けておくものか」
 トラ十は、ピストルの狙《ねら》いを定め
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