はないというその青年紳士こそ、気がどうかしているのではないかと、みな彼をあやしんだ。
「あなたは、誰だか知りませんが、後へ下っていてください。私たちはれっきとした証拠があるから、この怪《け》しからん女を、とりおさえているのだ」
一等運転士は、ピストルでうたれた肩口をおさえつつ、気丈夫《きじょうぶ》にもきっぱり叫んだ。
「れっきとした証拠ですって。れっきとした証拠なら、こっちにもありますよ。ただし、この少女がピストルをうたないという証明になる証拠なんです」
と、青年紳士は、あくまで、房枝をかばうつもりと見える。
「あなたは、まるで探偵みたいな口をききますねえ。われわれも、ほんとうの証拠があるのに耳をかさないというわけではないのです。あなたに自信があるなら、いってごらんなさい」
「では、いいましょう。なあに、かんたんなことなんです」
と、青年紳士は窓のところへよった。なにをするかと、一同が目をみはっていると、窓の枠《わく》のところを指し、
「ここをごらんなさい。窓わくの、ここのところが、黒くいぶっています。これはピストルをうったとき、火薬の煙で、こんなにいぶったのです。この事実は、一
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