。
「どうだ、りっぱなものだろうがな。わしはちかごろ、あんな見事な大花環を見たことがない。房枝、お前は、今はおしもおされもせぬ一座の大花形だよ」
「だれが、贈ってくださったのでしょうね」
と、房枝は、小首をかしげたが、そのとき、ふと気がついて、
「ああひょっとしたら、部屋においてあるあの片っ方の草履《ぞうり》の奥さまがおくってくださったのではないかしら。でもまさか」
と、房枝は、自問自答をして、再びその花環へ、まぶしい視線を送ったが、そのとき、房枝は、とつぜん、「あっ」と、大きな叫びごえをあげておそろしそうに身をひいた。
「どうした、房枝。いきなり、そんな大きなこえを出して」
房枝は、そのとき、新団長の腕を、しっかととらえて、こえをふるわせた。
「ちょっと、あれを、あたしの大花環の横にならんで、気味のわるい花籠が」
「ええっ、気味のわるい花籠が?」
怪しき花籠《はなかご》
「気味のわるい花籠? あの花籠なら、たいへんきれいじゃないか」
と、黒川新団長は、房枝のことばを、むしろふしんに思っているようすだった。
房枝は、恐怖の色をうかべ、
「いいえ、あの花籠には、あたし
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