ニーは、雷洋丸とともに、太平洋の底に沈んでしまった。だから、この出し物はだめとなって、初日、二日は、仕方なく、上は洋髪の頭のままで、からだには、紙でつくったかみしも[#「かみしも」に傍点]をつけ、博多今小蝶《はかたいまこちょう》と名乗って、水芸の太夫娘となって客の前に現れた。それでも、なにもしらない客たちは大よろこびで、小屋が割れそうなくらい手をたたいた。
房枝は、うすい板敷《いたじき》の舞台の上で、そっと涙をのんだ。
(ポニーほしい)
と思ったが、それは、どうにも、急場の間にあうはずがなかった。
「じゃあ一つ、空中サーカス道具を手に入れ、ついでに、天井の高い天幕《テント》も、借りちまうか、これなら、ごうせいな番組となって、お客は、またうんとふえるにちがいない」
と、楽屋の草原の上に、あぐらをかいている黒川新団長は、ものすごく気前がよかった。
五日目は、徹夜で、大天幕張り、次の日から、見ちがえるような新興ミマツ大曲馬団超満員御礼大興行と、長たらしい名前の旗を出し、「お礼のため、特に料金は二割引」とわけのわからぬ但し書をつけたが、これがまた大当りと来た。一座は、波間に沈んでいく雷
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