―ライヨウマルノコトヲ、オモイダシテクダサイ。コノサーカスハ、イツデモ、ワタクシノテニヨッテ、バクハツシマス。ソレガコマルナラ、コンヤ十一ジニ、クロカワダンチョウト、ハナガタフサエト、マルノウチ、ネオン・ビルノマエニキナサイ。ケイサツニツゲタリ、コノハナカゴヲウゴカスト、スグバクハツサセマス、ワタクシタチノブカガ、イツモチャントミテイマス。バラオバラコ」
[#ここで字下げ終わり]
気味のわるい脅迫状《きょうはくじょう》であった。
――雷洋丸のことを、思い出してください。このサーカス(曲馬団のこと)は、いつでも、私の手によって爆発します。それが困るなら、今夜十一時に、黒川団長と、花形房枝と、丸ノ内、ネオン・ビルの前に来なさい。警察につげたり、この花籠をうごかすと、すぐ爆発させます。私たちの部下が、いつもちゃんと見ています。バラオバラコ――という文面であった。
「おお、これは、たいへんだ。あーあ、せっかく、こんなに大入満員になって、よろこんでいたのに」
と、黒川は、顔から血の気をなくして、そのばにしりもちをついてしまった。
房枝は、黒川から手紙をとってこれを読みくだしたが、もちろん彼女も、おどろいてしまった。
「やっぱり、そうだったのね。ミマツ曲馬団は、雷洋丸以来、ずっと何者かにねらわれているのね。バラオバラコというのは、何者なんでしょう。――団長さん、どうするつもり?」
黒川は、しばらくは、へんじもしないで呻《うな》っていたが、
「いきたかないが、ここはおとなしく相手のいうことをきいて、やっぱり、いってみるしかないだろうね。せっかくの小屋をこわされ、客の入りをじゃまされては、商売あがったりだよ」
といって、同意をもとめるように、房枝のかおを見上げた。
大蜘蛛《おおくも》
とつぜん、ふってわいた災難であった。
爆発などをやられては、たまったものではない。警察へ知らせたことがわかると、すぐ爆発させるというし、この花籠をうごかしてもいけないという。すると、相手のいうとおり、おとなしく従うよりほかはない。
「団長さん、なんとか、相手にしれないように、警察のたすけを借りることは出来ないものかしら」
房枝は、まだ何とかして、のがれたいと考えた。
「だめだよ。そんなことをして、相手にさからうと、この小屋もわたしたちの体も、めちゃめちゃに空中へふきとんでし
前へ
次へ
全109ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング