たくさんつんであります。
「おうい、ミドリちゃんはいないか」
 高一は、早口に妹の名をよんでみました。
 そのとき、つみかさねてあった荷物が、がさがさとうごきだしました。
「あっ兄ちゃん。あたしはここよ」
 帆布《はんぷ》がまるめておいてありましたが、その中から、とつぜん、なつかしい妹ミドリのこえがしたものですから、高一は、
「おお、ミドリちゃん。よくまっていてくれたね。いまたすけてあげるよ」
 と、かけよりました。帆布をのけていると、その下にかわいそうなミドリが、手足をくくられてつながれていました。高一は、わる者どもの、にくいやりかたにはらをたてながら、つなをほどいてやりました。そして、きょうだいは、ひさしぶりに、たがいに手と手をとりあったのです。うれしさに、なみだが、あとからあとからわいてきて、きょうだいは、はじめのうちは、おたがいの顔をよく見ることができませんでした。
「ぐずぐずしていてはたいへんだ。ミドリちゃん、すぐ、にげよう」
 高一は、妹をひったてるようにして、テントの外にのがれました。そして、電気鳩を砂のなかからほりだし、それを、ゴムびきのかっぱにつつんでわきにかかえました。
「兄ちゃん、どこへにげるの」
「船にのって、すこしでも早く、この島からにげだすのだよ。海へ出れば、きっとどこかの船にであい、たすけてくれるよ」
 くらい海岸へでてしらべてみますと、ボートが二そうありました。さいわい番人もいません。高一にはなかなか動かしにくいボートでありましたが、それでも一生けんめいに海の中におろし、そのひとつにのりこみ、もう一そうは、うしろにひっぱってゆくことにしました。
 高一は「地底戦車」を発明したお父さまが、敵国からにらまれていることがしんぱいでなりません。それで、死にものぐるいで、くらい海にこぎだしました。
「兄ちゃん、もうひとつのボートはいらないのでしょう。おいてくればよかったのにねえ」
「いや、のこしておけば、わる者どもが、それにのっておっかけてくるじゃないか」
 高一は、いつもあわてないで、よく考えていました。やがて、ボートの一つは船ぞこのせんをぬいて海の中にしずめてしまいました。これで、スパイ団長をはじめわる者どもは、無人島に島ながしになって、どこへもゆけなくなったのです。やがて気がついて、さて、おどろくことでしょう。しかし、あのわる者どもが、そ
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