って枕の下におちて行った。
 彼は鈴江の腕がギュッと身体をしめつけて来るのを感じた。彼はいつもとはまるで反対の気持で、鈴江の強い握力《あくりょく》に、かぎりなき愛着《あいちゃく》を感じてゆくのであった。
 と、まアこういう話なんだがね、そのうちに、妻もお湯から帰ってくるだろうから、そうしたら、晩飯《ばんめし》でも御馳走することにしようよ。
 もう今日がお別れになるかも知れないんだ、ゆっくりして行きたまえ。



底本:「海野十三全集 第1巻 遺言状放送」三一書房
   1990(平成2)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「新青年」博文館
   1930(昭和5)年4月号
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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