外《ほか》に清子、かおるの二人の新顔《しんがお》が加わっていた。
二 被害者ふみ子の身体には暴行の跡が発見されなかった。
三 被害者ふみ子は、春江の場合の如く右手で右の乳房を握ってはいず、右手は正しく伸ばされていた。
四 被害者ふみ子の寝床は、春江の場合に於けるが如く、表向きの窓際にはなく、それと九十度だけ右廻りに廻った壁ぎわに寝ていた。
(因《ちなみ》に、春江の位置に寝ていたのは、鈴江であった)
[#ここで字下げ終わり]
この外の点は、皆おなじ事で、不思譲なことに、殺害の時間も、短刀の大きさも、致命傷の位置も同じで、ただ創痕《きずあと》の深さが、すこし深いように報告されていた。
第二の惨劇の日につづく一両日の間に、僕の耳に入った特殊事項について二三のことを述べて置こう。
なに、君はこの事件に、どんな役目をしていたのだか言えというのかい。それは判りきっているじゃないか。どうせ終りまで聞けば、判るにきまっていることなのさ。僕が誰だって、この物語の進行には一向|差支《さしつか》えないわけじゃないか。
鈴江が、捜査係長に訊《たず》ねられた一事《いちじ》がある。それは第二の犠牲者たるふみ子の肩のところに貼ってある万創膏《ばんそうこう》について生前《せいぜん》ふみ子が、おできが出来たとか、傷が出来たとか言っていなかったかという質問である。鈴江は知らないと答えた。同じ質問が次にお千代に発せられた。お千代は細い引き眉毛《まゆげ》をしかめながら何か思い出そうとしているようだったが「ふうちゃんの首のところには、おできも傷もなかったようですわ、あの日のおひるっころ、ふうちゃんと蛇骨湯《じゃこつゆ》へ一緒に入ったんですがそのときお互様《たがいさま》に、洗《なが》しっくらをしたんですのよ。わたしはふうちゃんの首のところに小さい黒子《ほくろ》があるのを見付けたものですから、ちょいとおイタをしてやれと思ってふうちゃんの頸《くび》んとこをギュウギュウこすってやったんです。ふうちゃんは、あんたいたいわよ、血が出るじゃないのといいましたから、でもこの小《ちい》ちゃい黒子が、どうしてもとれやしないのよと言って笑ったんですの、そのときによく注意していたと思いますが、別に傷もおできも見えなかった、ような気がしますけれど……」と陳述《ちんじゅつ》した。清子、かおる、とし子の三人も知らないと、順々に答
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