。商売上、Z軍団司令部らしい顔をして、返事をしているんだったら、後でわしは叱られて迷惑するから、今のうちに、スパイならスパイと、名乗ってくれ……”
“なんだと。下《さが》れ”
“なにィ。下れとは、何か”
 横で、全身をこわばらせて、怪物隊を凝視していたカモシカ中尉は、おどろいた。
「おいおい、モグラ下士。司令部は、まだ出ないのか。生死の境に、秘密無電を打って喧嘩《けんか》をしちゃいかんじゃないか」
「はい。そうでありましたナ。どうやら司令部の有名な怒り上戸《じょうご》のアカザル通信兵が出ているようです。司令部であることに、まちがいはないようです。なにしろ、こういう重大報告は、念には念を入れないと、いけませんからなあ」
「そうと決まったら、はやく打電しろ。ぐずぐずしていると、敵の怪物隊はこっちへ攻めてくるかもしれないぞ」
「はい、はい。――おや、司令部が引込んでしまった。どうも気の短い奴だ。あのアカザル通信兵という男は」
 モグラ下士は、また、きいきいと呼び出し信号を出した。
“おい、軍団司令部か。こっちへ挨拶もしないで、引込んじまっちゃ、困るじゃないか。手間どっているうちに、こっちが敵
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