面下を、まっしぐらに、こっちへ進んでくる様子だ」
「潜水艦なんぞ、おそれることはないじゃないか」
「それはそうだ。だが、そいつは、潜水艦にはちがいないが妙な形をしている奴ばかりで、姿を見たばかりで、気持がわるくなると、さっき、将校が、わが隊長に話をしていたぜ」
「で、こっちは、どうするのか。わがキンギン国の潜水艦隊は全滅だそうだし、他の水上艦隊は、みんなイネ州の海岸へいってしまったし、一体、どうするつもりかね」
「さあ、おいらは司令官じゃないから、どうするか、知らないや。多分、海中電気砲で、敵を撃退するのじゃないかなあ」
「ふん、海中電気砲か。あれは、このキンギン国軍の御自慢ものだが、こうなってみると、なんだか心細いなあ」
「くだらんことをいわないで、さあ、交代だ。あとを頼むよ」
監視哨の兵は、そこで部署を交代した。
空中方面には、更に敵の近づいた様子がないので、彼は、むしろ海中からの危機のことを心配し、空中のことを心配しないでいた。
ところが、それから一分間ほどたった後、この監視哨は、顔の色をかえて測距儀《そっきょぎ》にすがりつかねばならなかった。それは、とつぜん空中に、どこから湧《わ》いたか、すばらしい金色の翼を張った超重爆撃機が数百機、頭上に姿をあらわしたのであった。
「ああ、あれは……」
その超重爆撃機は、まるで、戦艦に翼が生えたような怪奇きわまる姿をもっていた。
「敵機だ。大空襲だ!」
監視哨は、ようやく、吾《わ》れにかえって、警報釦《けいほうボタン》を圧《お》し、そして口ごもりながら電話で報告をした。
高射砲が、砲撃をはじめたのは、それからわずか三分のちのことだったが敵機は、それまでに、既に数百の爆弾を翼下から地上に向け切りはなしていた。
爆煙は濛々《もうもう》として、天日を蔽《おお》った。土は、空中高くはね上り、樹木は裂け飛び、道路には大きな穴が明いた。
だが、被害は、まずそれだけであった。十数名の兵士が、死傷したのが、キンギン国軍にとって、最も大きな痛手であった程度で、地下にあるマイカ大要塞の防禦力は微動だにしなかった。
そのうえ、高射砲の砲弾は、刻一刻猛烈さを加えていった。鳩一羽さえ、通さないぞといったような、地上からの完全弾薬は、いかに敵の空襲部隊が精鋭であっても、これ以上キンギン国の領土内に侵入することを許さなかった。それは、
前へ
次へ
全38ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング