明猫」の見世物《みせもの》を見て、そのあやしい猫にさわった者ばかりであったが、そういうことがはっきりするには、それから五日もかかった。
 その間に、全市の透明人間は、ますますかずがふえていった。透明になった者が誰かのからだにさわると、かならずその人のからだがやがてもうろうとなって透明化することが分った。つまり伝染性があるのだ。
 大きな恐怖がひろがっていった。だが、このさわぎは、事件発生後七日目に急に解決することとなった。
 というのは、はじめの「透明猫」をつくった羽根木博士という学者が、その筋へ名乗り出たからである。
 博士の研究は、肉体の透明化にあった。からだを、空気と同じ反射率、屈折率《くっせつりつ》をもたせることにあった。博士は、かびの一種が、そういうことに強い働きのあることを発見し、自分の研究室でそのかびを培養《ばいよう》しては、いろいろな虫やモルモットや猫に植えていたのである。
 例の猫も、前足と後足とをそれぞれしばり、かびを植えた直後だったが、その後足のひもがとけたので、研究室から外へにげだし、崖の下へおちた。そのとき青二が通りかかって猫を拾ったわけだ。
 しかし青二は猫
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