た家へつれこんで、すごいごちそうを注文し、酒をもってこさせて、大宴会をやった。
六さんの体に酒が入ると、急にことばがからんで来た。
「やいやい、坊《ぼう》や。なんだってお前は、まだ帽子をとらねえんだ。おれを甘くみてやがるとしょうちしねえぞ。こら、帽子をとれ。手前はこの総裁六さん――じゃあねえ、何とか六麿のアソンを何と思ってやがるんだ」
そばにいた女たちが、六さんをとめたけれど、六さんはとうとう青二におどりかかって、その帽子をひったくってしまった。
「ああっ――」「きゃあ――」えらいさわぎが起った。
六さんは一ぺんに酒のよいがさめてしまうし、女たちは悲鳴の声をひきながらその座敷からにげだした。
なぜ。青二の帽子の下には、なんにもなかった。首のない青二が、そこにめいわくそうに動いているだけだった。
六さんは、腰をぬかしてしまって、口をぱくぱく開くがひとこともいえなかった。
さて、その夜のさわぎもどうやら片づいて、六さんと青二は、そこを引きあげた。そのとき六さんは、口どめ料として、そのうちへ五万円を出した。
二人はホテルへとまった。
六さんはベッドの上で、青二に相談をかけた。
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