きあらわれるものであるんである”と」
「インチキにあらず。ちゃんと生きています。インチキを発見された方には、即金で金十万円也を贈呈《ぞうてい》します。透明猫普及研究協会総裁村越六麿敬白」 六さんはえらい名前までこしらえて、でかでかと、とびらにはり出した。
 こいつは、はたして大あたりだった。二十円をはらって入場者がはいること、はいること。
「大入満員《おおいりまんいん》につきしばらく客どめ。そのあいだ、ここに出してある透明猫いけどりの大冒険《だいぼうけん》の図をごらんなさい。こっちにあるのは、透明猫のいつわりなき写真でござい。今見おとせば、末代までも話ができん。さあ、いらっしゃいいらっしゃい。いや今しばらく大入満員の客どめだ」
 六さんは、ものものしいかっこうで、さかんに小屋の前にあつまる群衆をあおりつける。
 場内では、青二が、これまた太夫《たゆう》の服を着、顔と手足とのどはかくし、きれいにかざりたてた小宮殿のような透明猫のはいった箱のそばに立って、つめかける客の一人一人に、箱の上の穴から手を入れさせ、透明猫をなでさせるのであった。
 猫はねむいところを、たくさんの人々になでられ、毛
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