は、さすがにいいだすことが出来なかった。猫のことだけを話したのである。
 すると青年六さんは、目をかがやかして喜んだ。
「え、そいつは、すばらしいじゃないか。たいへんな金もうけがころがりこんだものだ。いや……お前、これは大もうけになるぜ。おれに万事《ばんじ》をまかせなよ。そして利益は五分五分に分けよう」
 六さんはすっかり乗り気になった。
「ところでちょっと、その本尊《ほんぞん》さまというのを見せてくれよ」
 そこで青二は、猫のはいっているふろしきを、六さんにさわらせた。
「なるほど、たしかにこの中に、猫みたいなものがはいっているぞ」
「そこで、ふろしきの中をのぞいてごらん」
 青二は、ふろしきのはしをすこしあけて、六さんに中をのぞかせた。
「おや、いないね。あら、ふろしきの外からさわると、ちゃんとはいってるんだが……」
 ふしぎに思った六さんは、こんどは手袋をはめた手を、ふろしきの中にさしいれた。
「ありゃりゃ、おどろいたなあ。ちゃんと猫みたいなもののからだにさわる。ふーん、やっぱり透明猫だ。インチキじゃねえ。へえーっ、お前はまあ、大した金のなる木を持っているじゃねえか。よし、これな
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