ないだろうか)
死人のたましいが出てくる話は、いくどもきいたことがある。しかし死んだ猫のたましいが出てきた話は、あまりきいたことがなかった。でも、今はそうとしか考えようがないのだった。
「おいミイかい」
青二は、思いきって、ふるえる声で、そういって、声をかけた。
「にゃーお」返事が、同じところからきこえた。
「あっ!」青二は、おどろきの声をあげて、その場にすくんでしまった。というわけは、彼はそのとき、草の上に二つの光るものがういているのを見つけたからである。
それはなんだか、えたいの知れないものだった。ただぴかぴかと光って、行儀《ぎょうぎ》よく二つがならんでいた。大きさはラムネのガラス玉を四つ五つあわせたぐらいあって、全体はうす青く、そしてまん中のところが黄色で、そのまた中心のところが黒かった。
(目玉のようだが、いったいなんだろう)
とたんに、また「にゃーおん」とあまえるような声がきこえた。たしかにその二つの玉のすぐそばから声が出たようである。
青二は、こわいはこわいが、その光った二つの正体を見きわめないではいられなかった。そこで、彼は勇気を出して、草むらの中へふみこむと、両手でその玉をぎゅっとつかもうと――。
「うわっ」青二は、いそいで手を引くと、その場にとびあがった。玉をつかむ前に、掌《てのひら》が、ごそごそとする毛のようなものにふれたからであった。
よっぽどそのへんでやめて、逃げだそうと思ったけれどもともと青二は、ものずきなたちだったから、ふみとどまった。そしてもう一度、その二つの玉の方へ両手をもっていった。
「あ、――」ふしぎな手ざわりを、青二は、感じた。毛の密生した動物の頭と思われるものに、ふれたからであった。
ふしぎな発見
「……猫の頭のようだが、しかしそんなものは見えないではないか」なんという気持ちのわるいことだろう、と青二《せいじ》は思った。
しかしこのとき彼は、さっきとはちがって、もうよほど落ちつきをとりもどしていた。もう一度その毛深《けぶか》い動物の頭にさわり、それから、おそるおそる下の方へなでていった。
全くおどろいた。たしかに、猫と思われるからだがあった。しっぽもあって、ぴんぴんうごいていた。足のうらには、たしか猫のものにちがいない土ふまずもあるし、爪もついていた。しかしそれは全く見えないのであった。
青二は、い
前へ
次へ
全11ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング