なっていました。もちろん、乗組員というのは、艇長《ていちょう》の青木学士と、それから副艇長の春夫少年の二人きりでありました。
それは、いよいよ明日が、待ちに待った進水式だという、その前日の夜のことでありました。青木学士と春夫少年は、潜水艇の中にはいって、しきりに艇内をとりかたづけていました。
そのとき、このまっくらな造船所へどこからやってきたのかくろい服をきた、十四五人のからだの大きい人が、しのびこんでまいりました。
「あ、部長。あれが潜水艇ですよ。青木学士の発明した世界一小さい潜水艇は、あれなんです」
「おお、あれか。あのぼーっとあかるいのは、なにかね」
「あれは、潜水艇の出入口の蓋《ふた》があいているのです。艇内にはだれかがいて、電灯をつけているから、それが出入口のところから外にもれて、あのように、ぼーっとあかるいのです」
「ああ、そうかね、トニー。しかし、中に人がいるのでは、ぬすむのに、つごうがわるいじゃないか。なぜといって、そうなると、きっと相手がさわぎだすにちがいないからね」
「しかたがありません。すこし荒っぽいが、あいつらを、ねむらせてやりましょう」
「ねむらせるといっ
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