ばかばかしい仕掛《しかけ》である。こういう動く島を、これからたくさんこしらえて、太平洋の方々に浮かべておくつもりなんだろう。もちろんそれは、太平洋に、戦争がおこる日に役立たせるつもりにちがいない。これは試験的のものだというから、アメリカでは、まだこの動く島をたくさんは、つくっていないと見える。とにかく、これはいいことをきいたわい」
 青木学士は、急にいのちがおしくなりました。
 いのちがおしいといっても、青木学士が急に卑怯《ひきょう》な人間になったのではありません。
 そのわけは、だれもしらないこれだけのアメリカの秘密を知ったものですから、なんとかして、これを、祖国日本にしらせたいものと思ったのです。これなら、皆さんもきっと、満足に思われるでしょう。そうなのです。まったく、そのとおりなのでありました。


   大手柄《おおてがら》


 さて、皆さん。
 これから青木学士が、水上少年と力をあわせて、どんな風にして、アメリカ製のこの動く島から逃げだすことができたかとお思いですか。
 もちろん、二人は、アメリカ人たちの手からのがれて、出ていってしまいましたとも。そのかわり、二人はいのちを
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