れは、わがアメリカが秘密に作った動く島なんだ」
「えっ、動く島ですか」
 と、学士は、わざとおどろいた顔をしました。すると、かの怪外人は、ますますいい気になって、
「うふふん、どうだ、おどろいたろう。つまりこれは、浮きドックから思いついたもので、ふだんは海面下にかくれていて、エンジンでもって思う方向へ動けるのだ。なにか太平洋に――太平洋にかぎったことはないが、とにかく事があると、この動く島は潜水艦や飛行機の母艦《ぼかん》になるのだ。油もうんとつんでいる。修繕工場《しゅうぜんこうじょう》もある。食料も一ぱいある。実はこの動く島は、いま試験のため、こうして……」
 と、ここまでいったとき、かの怪外人は、急に口をつぐみました。
 それは、うしろにいた下士官が服をひっぱったからです。調子にのって、秘密のことまで、ぺらぺらといいそうになったので、おどろいて注意をしたのです。
「いや、むにゃむにゃむにゃ。もうこのへんでいいだろう」
「ありがとう」
 青木学士は、礼をいいました。
 彼は、心の中にこう思いました。
「どうもそうだと思ったが、やっぱりそうであった。これは、いかにもアメリカがやりそうな、
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