ッチ》開《ひら》き方《かた》、はじめ」
「はーい」
栄螺《さざえ》が、そろそろと蓋《ふた》をもちあげるように、いまこの豆潜水艇は、昇降口の蓋を、そろそろともちあげはじめました。学士は、軽業師《かるわざし》が梯子《はしご》の上へのぼったような恰好《かっこう》をしています。
「あっ、しめろ!」――とたんに学士の命令です。
春夫は、あわてて口蓋を、がたんとしめました。
「島だ、島だ。島へのしあげている。そして……」
学士は、上《うわ》ずったこえでさけびました。
ふしぎな島?
さすがの青木学士も、よほどおどろいたものとみえ、にぎりこぶしで、とんとんと自分の胸をたたくばかりで、しばらくはあとの言葉がつづけられませんでした。
これを横からみている春夫少年は、気が気ではありません。
「ねえ、青木さん。早く話をしてよ。いま、ぼくに口蓋《ハッチ》をあけさせて、青木さんは、いったい、なにを見たの?」
「し、島だ……」
「島を見ただけなら、なにもそんなにおどろくことはないじゃありませんか」
「と、ところが、あたり前じゃないんだ」
と、青木学士のことばは、すぐとぎれてしまいます。
「
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