はずすために、かるい震動をあたえてみたのです。しかし、深度計の針は、あいかわらず、零のところにとまったきりでした。
「これは、ふしぎだ」
 青木学士は、深度計のまえに腕組をして、うーむと呻りました。一体、どうしたわけでしょう。


   口蓋《ハッチ》開《ひら》き方《かた》


「じょうだんじゃない。この潜水艇は、推進器《すいしんき》がからまわりをしているぞ」
 青木学士が、大きなこえをだしました。よほどおどろいたものと見え、学士の顔は、まっかです。
「からまわりって?」
「からまわりというのは、推進器が、水の中でまわっていないで、空気の中でまわっているという意味だ」
「え、空気の中で? すると、この豆潜水艇は、飛行機になって空中をとんでいるというわけですか。すごいなあ、この潜水艇は……」
「おだまり」
 学士が、しかりつけました。
「え」
「いくらなんでも、豆潜水艇が飛行機になったりするものか」
「あ、そうでしたね。この艇はジャガイモみたいな形をしているから、とても空中をとべないや」
 春夫少年は、つい青木学士にわるいことをいってしまって、気の毒になりました。
 しかし、つぎからつぎ
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